小説『ずっと待ってた猫』

小説『ずっと待ってた猫』 小説『ずっと待ってた猫』

心に傷を負い、
路地裏の静けさに身をひそめるように暮らしていた一匹の猫。
人間の声も気配も、ずっと遠ざけて生きてきた。

名前もなく、呼ばれることもなく、
ただ“誰でもない存在”として流れていた日々――。

そんな猫の前に、ある日ひとりの少女が現れる。
軽やかな靴音。あたたかな声。差し出された手。

最初はただの偶然だった。けれどそれは、
猫の運命を、生き方を、そして「誰かを信じる」という考え方さえも
静かに、大きく変えていくきっかけとなる。

これは、名前をもらった猫と、名前を呼んだ少女の
ひとつの“さよなら”までの物語。

 

📘プロローグ

📗第1話「名前のない野良猫が少女と出会い希望をもらった日」

📕第2話「少女との出会いで変わった世界と野良猫の心

📙第3話「命の瀬戸際で呼んだ名前――高校生と野良猫が紡ぐ、ひと夏の奇跡とある事実」

📘第4話「失われた記憶のかけら―高台の公園でつながる野良猫と高校生の過去と今」

📗第5話「猫がそばにいたあの夜――少女が涙を流した理由」

📕第6話「もう一度、名前を呼ばれる日まで――猫が見た少女との約束」

📙最終話「優香とニーナの感動の別れ――命の終わりに交わすありがとう」

 

【作者からのコメント】
この物語は猫視点で描く小さな出会いと別れの物語です。よろしければブックマーク・コメントよろしくお願いします。

小説『ずっと待ってた猫』

感動の猫小説|最終話 優香とニーナの感動の別れ――命の終わりに交わすありがとう

優香と別れてから、二年の月日が流れ、季節は何度も移り変わり、街の風景も少しずつ姿を変えていった。けれど、私の中の時間だけは、あの夜を最後に止まったままだった。まるで心のどこかに深い傷が残り、そこから先へ進むことを拒んでいるかのように。今、私...
小説『ずっと待ってた猫』

感動の猫小説|第6話 もう一度、名前を呼ばれる日まで――猫が見た少女との約束

ー3カ月後ー季節は少しずつ移り変わり、あのときの冷たい雨は、今ではどこか遠い記憶のなかに霞んでいるはずなのに、私はまだそこに立ち止まっていた。優香がもう戻ってこないこと。それは、頭ではちゃんと理解している。あの夜に起きたこと、優香が選んだ道...
小説『ずっと待ってた猫』

感動の猫小説|第5話 猫がそばにいたあの夜――少女が涙を流した理由

……あまりにも突然だった。その日は朝から、まるで空そのものが泣いているかのような冷たい雨が、途切れることなく降り続いていた。街のすべてが色を失い、灰色のベールをまとって沈んでいくような気配。車の走る音も、人々の足音も、雨にかき消されて、世界...
小説『ずっと待ってた猫』

感動の猫小説|第4話 失われた記憶のかけら|高台の公園でつながる野良猫と高校生の過去と今

あの真夏、命の危険を感じたあの日から、季節は静かに巡っていった。今ではすっかり体調も回復し、私はいつもの路地裏の暮らしに戻っている。あの灼けるようなアスファルトの熱も、今では遠い記憶の中。けれど――ふと、風が通り抜けるたびに思い出す。あの日...
小説『ずっと待ってた猫』

感動の猫小説|第3話 命の瀬戸際で呼んだ名前――高校生と野良猫が紡ぐ、ひと夏の奇跡とある事実

はっきりとは思い出せない――けれど、どこか胸の奥で確かに揺れている、断片的な記憶がある。春の光のようにかすかで、指の隙間からこぼれ落ちるような感覚。そのかけらは、ときどき目の前の優香の姿と重なり合って、不意に胸を締めつける。もしかしたら、私...
小説『ずっと待ってた猫』

感動の猫小説|第2話 少女との出会いで変わった世界と野良猫の心

ずっと待ってた猫 ~ 少女との出会いで自分の存在に気づき、最後の約束を交わす物語 ~少女と出会った翌朝――目が覚めると同時に、私はいつものダンボールの中から飛び出していた。気づけば、路地裏を抜け、少女の姿を求めて通りまで出ていた。『外の世界...
小説『ずっと待ってた猫』

感動の猫小説|第1話 名前のない野良猫が少女と出会い希望をもらった日

ずっと待ってた猫 ~ 少女との出会いで自分の存在に気づき、最後の約束を交わす物語 ~②その日も私は、いつものようにダンボールの中で丸くなっていた。雨上がりのアスファルトは冷たく、空気の中にはまだ湿った匂いが残っている。足音が聞こえたのは、そ...
小説『ずっと待ってた猫』

感動の猫小説|プロローグ ずっと待ってた猫が少女との出会いで自分の存在に気づく物語

冷たい風が吹き抜ける路地裏で、私はいつものように小さく身を縮めていた。すれ違う人々の足音は遠く、乾いたコンクリートの地面を叩く風だけが、私の存在を確かめるように通り過ぎていく。薄暗い街灯の下、擦り切れたダンボールの中で膝を抱えるこの時間が、...